「明日? そんな先のことなんてわかんないわよ!」

Kポにハートを撃ち抜かれて韓国留学を決意したイイ大人のイタすぎる生態日記

ちょっと神様そこのところ聞かせてkwsk

どうしてここでレジを打っているんだろう?

 

春の陽気に誘われて、美容室へと出かけた。

シャンプーの気持ちよさに、うとうととしてしまう。

「おわりましたよー」というスタッフの声とともに、

倒していたイスの背もたれが戻され、

同時に自分の顔に乗せられていた布が、はらりと落ちた。

大きなあくびをする私の目に映ったのは、目の覚めるようなイケメン。

夢見てるのかな。

身長190cmの長身、そして長髪の東出昌大似。

腰まであろうかという髪から、その水滴がぽたりと落ちる。

その瞬間、私の膝の上に冷たいものが零れた。

夢じゃない。そう思うや否や、

「は……ううううう!」

とうめいてしまった。そんな私を不思議そうにのぞいてくる顔は、

見とれるほどに端正で。

「大丈夫ですか?」

と聞いてくるので、

「はい、大好きです」

と、よくわからない返答をしてしまった。

彼はアパレルショップのオーナーらしい。

美容院の主人と彼とは仲が良く、時々こうやって、美容室までやってくるとのこと。

「仲がいいんですねえ」

「そうなんですよ……あ。うちと同じだ」

店に置かれた新品のレジを見つけた彼がそう言うと

美容室の主人が目を輝かせた。

「ホント⁉ 使い方わかる⁉ オレ、鍵すら開けられないんだよ…」

セットを終えた彼は、なぜかレジ講習会をすることに。

一生懸命教えるも、主人も主人の奥さんも機械オンチで埒が明かない。

頼みの綱の若手スタッフは早退してもういない。

イケメンは、もうそろそろ帰らなければならない。

明日、消費税は8%になる。

そこで、ヘアセットが終わった私に白羽の矢が当たったというわけだ(←なぜ…)。

鍵の開け方、レジの基本的な打ち方、間違った場合の取り消し方法、

領収書の出し方、レシート用紙の交換方法、税率修正の方法などなど

イケメンの教え方は丁寧かつわかりやすく、

私は15分もかからずに覚えてしまった。

「あとは頼みましたよ」

と、ハイタッチしながら彼は店をあとにした。

彼のいない店内で、私はやり方を紙に書いてまとめた。

それを見ながら、3人でレジを打ってみる。

「カット、カラーで9500円。1.08かけたら10260円ですが

端数は切り捨てにしたいとのことなので、設定変えておきました。

合計10200円。これで大丈夫ですか?」

「おおお!」

よかった。これで明日からの営業も大丈夫そうだ。

なぜ私がここで、レジを打っているんだろう?と思わないでもなかったけど、

ふたりの喜ぶ顔を見ていたらそんなことはどうでもよくなってきた。

本年度最後にいいことをした自分、おつかれさん!

 

 

………いやいやいやいやいやいや!

これイケメンとの貴重な出会いが

レジの使い方に上書きされたっていうただの残念話じゃね?

運命をモノにできなかった愚か者が自分を癒すために、

いい話にすり替えただけじゃね?

よくよく考えてみたら、ミジンコレベルのマイ対人スキルでは、

レジの使い方だけは鮮明に記憶されてるけど、

その分イケメン知識が保存されてません……。

なにこれどんな呪い? ちょっと神様そこのところ聞かせてkwsk